Q:イタリアンやジャーマンのマイスターものやオールドは扱わないのですか
A:
 やらないと言い切る積もりはありませんが、お客さまの層をあまり厚くしたくないというのが本音であることと、価格幅が大きくなり過ぎるため、お選びになるにあたり、値段程度で、「いいもの」「わるいもの」という見解を持たれることに懸念もあります。あんなのがほんとは欲しいけど、この程度の予算だから、という頭でバイオリンを求めて頂きたくないのです。
 オールドには、年月が作り上げた安定性や演奏性、音色がありますが、何時それが最終的なサービス、オーバーホールや部品の交換や修理のようなことを受けたかの保証もありません。やはり古いものは古いもの、新しいものにくらべれば、手が掛かります。仮令お値段が、当店の新作と同じような価格帯になるものがあったとしても、その後何時迄安全にお使い頂けるかがわからないものですし、佇まいや作風の温存という課題から、無闇に手直し出来ませんので、気に入らない癖があってもそのままお渡しすることになります。そういうものは、誰様にでもお薦め出来るというものではないと思っています。イタリアンやジャーマンといったヨーロッパの新作楽器は、仕上、特に作り付けはとてもかちっとしていて見映えはするのですが、価格も「著名な産地ブランド」な分だけ高くなります。人件費も日本と変わらないかより高い土地柄です。高ければ良いというものではないのです。何処で出来たか、何時出来たかというより、楽しく買って使えるかということのほうが問題なのではないでしょうか。

 バイオリンは、自分の求める音色に近付く為、何本も買い換え続けるという方も居られます。それも否めない衝動ですが、当店としては、うちから旅立った楽器が長くおひとりのもとで、共に歳をとっていってくれてこそ、その人の音が出せるのだと信じています。そのためには、新作の方が、その変化を感じ易く、喜びも倍増するものだと思います。
 当店の楽器は大体中国の作家やメーカーによるものなのですが、中国は思いつきで商売が始められるお国柄ではなく、魅力ある分野に国のバックアップがなされ発展を促される特徴があります。ここ二十年程度で、中国の弦楽器は恐ろしく飛躍し、現在では、中国からのサプライがなければ、弦楽器に触れる機会が遠退くことは間違いない程です。取引先も沢山もっており、うちの作品を作るマイスターは勿論、他の店やメーカーにも販売していますし、大きなメーカーの監修も行っておりますが、所謂人件費を吹っかけることなく中国レートを有り難くも守って製作に勤しんでくれています。同時に幾人ものエージェントとも取引をしており、紹介先もチャンネルも多いので、何処かでうちにある御品と同じ銘の楽器を見ることもありましょうが、当店はバイオリンの専門店で、調整を得意としておりますので、詳しくない雑貨販売中心の業態のお店とは全く違うものをお納め出来ます。が、勿論多少高くなります。もとが幾らであれ、手を尽くせる限りの手を尽します。中途半端な、納得出来ない状態では御紹介致しません。弾き易くて楽しいことが、何より大切な喜びであることは、楽器を買ったという満足感をさらに大きくしてくれることでしょう。

 当店では、HenshengやRomanza、YamahaやSuzukiといったメーカー品も取扱っておりますが、御紹介といっても製品の金額が余りに幅広くなることと、当店からの返品先がある「プロパー」御品で、このあたりのものとなりますと、お渡しする迄の在庫状態において当店のモットーでもある「弾き易い楽器」に育てる等調整の手を掛けられないから、店にあり乍らにしてお渡し迄時間が掛かることで、折角のお喜びをお預けにすることになりますので、在庫販売はせず、お時間を承知頂ける場合にのみお納めに応じております。

もどる