孫剔氏マスターメイド・バロックポシェット178mm・2010年
フィクスドテイル・カヌーボディ

全長38cm、トップ長18cm、巾最大部5cm、弦長21.6cm
トップ材:二十年乾燥のスプルース材 バック・ネック:二十年乾燥のメイプル材
エッジインレイ、メイプルフィンガーボード、メイプルサドル

この楽器の為に作られた、全長44cmスネークウッド材製バロックボウをお付けします。

バイオリンの普及期には、こうした楽器も作られていました。
いろいろな呼び名があります。キットとか、キッツと呼ばれたり、ポッシェットと呼ばれたり、用途にゆかしくダンシングマスターフィドルと呼ばれたりしていますが、今はミニバイオリンという方が適当でしょう。これは、主として17〜8世紀のヨーロッパで宮廷ダンスといわれ、後にバレエやソシアルダンスとなるバロックダンスの教師が、リズムを提示する為に携帯し演奏した楽器の中で、17世紀初頭に見られたものを複製しています。

この時代、ピアノ等の普及はないので、楽器を携行する要求から、いろいろなものが作られました。特にバイオリンは、メロディの演奏だけでなく、リズムの提示も出来、小型化しても弾いて音を出す訳ではないので、それなりに音量も伸ばす音も奏でられるので重宝ではあるものの、演奏を展示することが目的でない場合は大き過ぎたのです。
本来のバイオリンのように、トップとバックをサイドを挟んで貼り合わせ箱としている普通の手法で作られるのが専らでしたが、剛性に劣り良く壊れました。その中で何人か、元々彫刻家具の方面の技術があった作家が、ペグボックスからバック迄を一体で削り出し剛性を残す手法を取りました。
それがこの楽器の原型です。
バックを舟型に刳り貫くのは、まさしく剛性の為で、カヌーバックといわれています。
ネックは、そうした時代の作り(バロックバイオリンと同じ)ですから、指板の高さを与える厚みや角度はありませんので、レイサーというクサビを指板の下に取り付ける方法で指板の高さを持ち上げています。1600年前期の手法を正確に再現して完全な手製作となったこの作品は、テイルピースロープをエンドピンで支える方式と、削り出しの凸ぱりで支える方式との2点が上がって参りました。二年掛かりの大事業でした。

モチーフは古楽器ですが、再現するに当たり現代風の強い弦を使えるようにすることと、より音量を求めることを考慮され、本来古楽器のこれにはなかったバスバーとサウンドポストを採用され、今様の音楽活動に取り入れて頂けるようになっています。

ケースはありません。そういう訳ですからケースに入れては意味がありません。トートバッグ等に突っ込んで頭を覘かせ、ソレッポク使いこなして下さい。但し御発送には、何らかケースを充当しますが、元々は分数バイオリンの為のものを流用しますので御了承下さい。

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此の時代の背景に、生活物資が全般的に殊の外高価であったことがひとつあります。実は此の頃、バイオリンのケースと云うのは専ら革で作った、昔新聞屋さんから配布された新聞受けのような形のサックであり、楽器の保護の役割は殆どなかったのです。チェスト状のケースも作られましたが、とてもお金が掛かったので、貴族階級かそれに近い財力のある一部の資産家でなければ得られなかったのです。
しかしバイオリンのメインユーザーは、そうした大資本を自由にできる人々よりもむしろ低い地盤での演奏を生業とする人たちでした。ダンス教師や辻演奏家、バーやサロンで演奏するハウスミュージシャンです。彼らにとってバイオリンは、旋律を美しく大きな音で奏でられ、素晴らしい表現手段となり得るものですが、楽器を買うとその入れ物まで手が出ない上、歩くことが主な交通手段だった時代、邪魔でしょうがなかったものの、笛や大掛かりなふいごを持つ複雑な楽器より軽やかに多数の音を現せるバイオリンを、軽快に携帯出来るよう製作者へ要求したのです。良く研究した歴史家の中には、訝っているようですが、この背景には貴族長上社会への大きな反感が根底にあり、同じだけ金をかけるなら彼らが持たないものをという反訴の姿勢から、却って高価になるこうした特殊なものを要求したと繙く人も居ます。

この時代は雨傘というのはまた大変高価で普通は持てませんでしたから、オイルスキンという革を油脂で防水した足元迄被う外套が使われましたが、そのポケットに入れてもちあるけるものをと当時の作家のうち器用に立ち回れる人が提案していきました。

演奏性とよりバイオリンに近い音質を求め、バイオリンの巾だけを狭くしたようなものも発生しており、幾つかは後世に残って居ります。しかし、この楽器の形式のものは、発展していく演奏法に追随するものではなかったことと、道具的要素が強かったので、極少数が音楽学校のコレクションや博物館にある程度です。